第13回 埼玉臨床眼科セミナーのご案内
謹啓
時下、先生におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
埼玉県下で眼科診療に携わる病院と診療所との医療連携を深め、より充実した眼科医療の提供を目的とした「埼玉臨床眼科セミナー」も第13回を迎えることができました。これも偏にこれまでご参加頂いた先生方のお蔭であり、心より感謝申し上げます。今回の特別講演には、東京大学医学部眼科学教室講師の本庄恵先生、愛媛大学医学部眼科学教室教授の白石敦先生をお招きし、本庄先生には最新の緑内障薬物治療、特に房水流出促進について、白石先生には瞬目時の摩擦に関連した種々の眼表面疾患についてお話しを頂きます。講演会後は情報交換会をご用意しておりますので、学術、医療を通してより親交を深めて戴ければ幸甚です。
多くの先生方のご参加を心よりお待ち申し上げております。
埼玉医科大学総合医療センター眼科
教授 小幡 博人
未熟児網膜症診療と治療後の近視発生要因について
当院のNICU・GICUは84床あり、現時点でアジア一の規模、全床稼働となれば世界一の巨大な未熟児センターとなる。年間入院患児数は800前後、その1割程度が1000g以下の超低出生体重児である。これらの患児全員の眼疾患を診療するに当たり、どのような事に気をつけながら診療しているかを供覧したい。 さらに、未熟児網膜症の患児は高い確率で早期から強い近視になる事が指摘されており、普段の診療でも遭遇することがある。しかし、この未熟児網膜症治療後の近視化は、未だ機序がはっきりしていない。そこで、これらの患児の1歳時の診察で検影法にて等価球面度数を求め、 Aモードエコーの結果などとの相関を求め、近視化に影響する因子を検討したので報告する。
縁内障診療では眼圧下降治療のみが現在のところ確かなエビデンスのある治療であり、 基本的には薬物療法が第一選択となっています。 近年、臨床使用可能な縁内障点眼薬が増え、プロスタグランジン関連薬(PG関連薬)、β遮断薬、αβ遮断薬、α1遮断薬、炭酸脱水酸素阻害薬、交感神経刺激薬、α2刺激薬、ROCK阻害薬、 加えて各種配合剤など、 選択肢は多岐にわたります。 ぶどうまく強膜流出路の房水流出促進により最も強力な眼圧下降効果を示すPG関連薬は全身的副作用が少なく第一選択薬ですが、様々な製剤の特徴にも注意が必要です。また、 多剤併用が必要となるケースではセカンドラインドラッグとしてβ遮断薬、炭酸脱水酸素阻害薬、α2刺激薬、ROCK阻害薬がよく用いられますが、それぞれに作用機序に特徴があり、作用副作用がことなります。多剤併用ではなるべく少ない薬剤数で、安全に必要十分な眼圧下降を得ることが重要であり、そのためには作用機序の異なる組み合わせで合理的に眼圧下降を得ること、全身・局所副作用が少ないことが重要です。本講演では縁内障点眼薬の薬理作用を整理し、 おさらいしていただきたいと思います。また、近年臨床応用されたROCK阻害薬は主経路の房水流出促進という新しい作用機序をもつ薬剤ですが、 この主経路流出促進については手術療法でも低侵襲な流出路再建術(MIGS)が注目を集めており、縁内障治療における主経路の房水流出促進の意義についても検討したいと思います。
瞬目は涙液層の再配分や導涙を通して涙液層の安定化に働くとともに、上皮のターンオーバーにも関与し、眼表面の恒常性の維持に重要な働きをしています。視点を変えれば、ヒトは1分間に約12~15回瞬目をし、一日の瞬目回数は一万回以上にもなります。瞬目は眼表面にとっては摩擦ストレスでもあり、瞬目時の眼瞼と眼表面との間のバランスが乱れることにより、様々な病態につながることが推測されます。
その代表例は涙液減少型ドライアイで、涙液量の減少により瞬目時の摩擦が亢進するため、角結膜上皮障害が発症もしくは悪化します。上輪部角結膜炎 (SLK) では、上輪部の弛緩した球結膜と上眼瞼結膜との瞬目時の摩擦亢進が病態形成に深く関与していると考えられており、この悪循環を断ち切るような治療(弛緩球結膜切除、上涙点プラグ挿入)が奏功します。また、Lid-Wiper Epitheliopathy (LWE) は、眼瞼縁の特異な結膜上皮障害で、高い眼瞼圧、眼球との瞬目摩擦亢進(たとえばCL装用)が病因と推測されます。
我々は、瞬目時の摩擦ストレスを眼瞼圧測定による定量化の試みを行っており、角結膜上皮障害に眼瞼圧が関与していることが明らかとなってきました。本講演では、瞬目に関連した眼表面疾患の病態メカニズムを眼瞼圧の測定結果を照らし合わせて解説させていただきます。最後に、眼表面摩擦測定の最新状況について御紹介します。
共催:埼玉臨床眼科セミナー/千寿製薬株式会社