第7回 埼玉臨床眼科セミナーのご案内
謹啓
時下、先生におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
埼玉県下の病院と診療所との診療連携を深める目的で発足した「埼玉臨床眼科セミナー」も今回で第7回を迎えました。これまでたくさんの先生にご参加いただき、心より御礼申し上げます。今回は、当教室の神田貴之講師による緑内障治療の教育講演の他、特別講演には富山大学医学部眼科教授の林篤志先生、埼玉医科大学医学部眼科教授の板谷正紀先生をお招きしております。講演後は情報交換会をご用意しておりますので、学術、医療を通してより親交を深めて戴ければ幸甚です。多くの先生方のご参加を心よりお待ち申し上げております。
謹白
防衛医科大学校 眼科学教室
教授 竹内 大
緑内障と網膜硝子体疾患は合わせて中途失明原因の約4分の3を占める2大疾患群である。このような疾患の治療では、患者も我々眼科医も苦労をともにしている。この2大分野の治療技術を磨くとともに治療を進歩させることが「死ぬまで自分の眼でものを見て生活する」という人間としてあたりまえの幸せを守るために重要である。
緑内障治療は各患者が期待余命の間生活に困らない視機能を維持する戦略である。もっとも大変な部分は、80歳の女性患者の平均期待余命が11年以上あるという長寿国において、死に至る直前まで視機能を維持するために、今の治療をどうすべきかと考えることにある。下方5度以内の視野しか残っていない80歳の女性にどのような治療を行うべきか?まだ40代なのに中心視野が障害されている強度近視眼緑内障患者にどのような治療を行うべきか?緑内障治療は患者の家族背景なども含めて患者と向かい合う必要がある。脂汗とともに自分なりにたどり着いた緑内障手術についてお話しさせていただく。
網膜硝子体診療は、OCTをはじめとする診断機器の進歩と硝子体手術システムと顕微鏡システムの進歩により、診断と治療が飛躍的に進歩した。しかし、これほど進歩しても網膜硝子体疾患は中途失明の半分を占める。特に、2位の増殖糖尿病網膜症は時に検眼鏡的に治っても視機能が十分残らないことが多い。埼玉医大に着任して重症な増殖糖尿病網膜症が多いことに驚いた。血管新生緑内障も実に多く、網膜硝子体手術と緑内障手術の両方を極めることの必要性を感じる。また埼玉医大の網膜剥離は、全剥離症例やPVRも多い。このような重症例の治療に当たることにやりがいを感じるとともに、手術技術の限界とさらなる進歩の必要性を強く感じる。
京都で学び一昨年よりに埼玉で緑内障と網膜硝子体疾患の治療を開始して痛感していることをお話しさせていただき今後の眼科医療の発展を展望したい。
この数年で黄斑疾患の診断、治療は大きく変化した。まず、OCTの解像度が格段に良くなり、個々の病態における黄斑部の変化を詳細に観察できるようになった。最近では補償光学眼底カメラも市販されるようになり、黄斑疾患や網膜変性疾患における黄斑部視細胞を生体眼のまま直接観察できるようになった。我々は補償光学眼底カメラを用いた各疾患における視細胞の観察を行っているので、ご紹介したい。また、非侵襲的に網膜血管の酸素飽和度を測定できる眼底カメラであるOxymapT1も臨床研究目的で使用しており、一緒にご紹介したい。
また、黄斑疾患の手術治療では、硝子体手術システムや環境の改善により、全体的な手術成績が向上しているだけでなく、黄斑下血腫、強度近視に伴う黄斑円孔、近視性牽引性黄斑症などの治療が困難な疾患に対しても治療成績が向上してきており、現在、それらの疾患に対して行っている手術方法について、まとめながらお話したい。
共催:埼玉臨床眼科セミナー/千寿製薬株式会社